僕らは、英語の「ネイティブ」には一生なれない
どーもー、おりばーです。
「ネイティブ」
日本で英語の話をしていて、この言葉を聞かない日はない。
ネイティブのようになりたい、
ネイティブの人に教わりたい、
ネイティブじゃない英語はダメだ、
ネイティブはそんなこと言わない、
ネイティブに笑われる英語フレーズ100選、
ネイティブにたった○ヶ月でなる秘訣、
言い出したらキリがない。
そんな、日本の英語教育を語るにおいて避けることのできない「ネイティブ」。
ここで質問。
僕はネイティブになれますか?
というのが今日のテーマ。
語源に触れつつ、日本社会におけるネイティブ信仰、そしてそれらが結果として誰も「ネイティブ」になれなくしている。
その理由について一緒に考えてみようじゃないか。
- native と 「ネイティブ」の違い
- 「ネイティブ」= native speaker
- 母語と母国語の違い
- 帰国子女の母語と母国語は?
- 帰国子女は「ネイティブ」には絶対になれない
- 「ネイティブ」は見た目が10割
- 最後に、コレを見てどうか考えてほしい・・・
- 結論!僕らは「ネイティブ」になれないし、ならなくていい
native と 「ネイティブ」の違い
まずはじめに、
日本における「ネイティブ」は英単語の native とは違う。
それはすでに知っている人が多いんじゃないかな。
native とは基本的に「原生の」「生まれつきの」または「原住民」をさす。
この意味で言えば、僕らはみな native だ。
日本に生まれ、日本に住んでいる。
厳格に言えば、日本の先住民は縄文人だ!弥生人だ!
と言う事もできるかもだけど、まぁ言いたいことは伝わっただろう。
でも、カタカナでの「ネイティブ」は明らかに違う意味で使われている。
「ネイティブ」= native speaker
日本における「ネイティブ」は "native speaker" を意味している。
goo国語辞書によると、
ネイティブ‐スピーカーの意味
ある言語を母国語として話す人。
となっている。
確かに、世間で使われている「ネイティブ」は、「英語が母語の人」を意味しているのだろう。
んん???
ボゴ?ボコクゴ?どっち?
ここで気をつけなければいけないのが、母語と母国語の違いだ。
母語と母国語の違い
これらの単語をごちゃ混ぜに使う。
僕もたまに勘違いしちゃってるかも・・・。
でも、一緒の意味じゃないんだよね。
三省堂 Web Dictionaryがその違いを短く分かりやすくまとめてくれている。
「母語」とは、
生後数年間のうちに、話者が生活環境のなかで自然に身につけた第一言語を言う。
「母国語」とは、
話者が国籍を持つ国で、「公用語」または「国語」とされている言語である。
つまり、
母語は必ずしも生まれた国に限定されず、
母国語は国籍によってすでに決まっている、
ということだ。
例えば、
日本で生まれて、日本国籍を持っていれば、母国語は「日本語」だ。
でも、生まれてすぐに渡米して、日本語を身につける前からずっと英語を使って暮らしていたとしたら、母語は「英語」の可能性もある。
そこで難しいのが帰国子女だ。
帰国子女の母語と母国語は?
以前にもこちらで話したように、
「帰国子女」とみなされるには日本国籍がぜったいに必要だ。
となると、帰国子女の母国語は全員「日本語」ということになる。
一方で、母語は人それぞれで違う。
例えば僕の場合、
生後まもなくして渡米。
記憶がある時点からすでにアメリカ。
家庭内では日本語。
一歩外を出れば英語を使っていた。
そんな僕の母語は、おそらく日本語だけど・・・。
これが意外と断言しづらい。
最初に口にした言葉はおそらく日本語で「まま・ぱぱ」だっただろう。
でも、日本語が不自由な時期もあったし、英語のほうが自分の言いたいことが言える、小学校まではずっとそうだった。
僕のように生後すぐに海外に飛ばされた子には、母語という概念が結構難しかったりする。
では、「ネイティブ」に話を戻そう。
帰国子女は「ネイティブ」には絶対になれない
ここまでをまとめてみよう。
「ネイティブ」は「ネイティブ・スピーカー」のことである。
そして、「ネイティブ・スピーカー」とはある言語を母国語として話す人である。
帰国子女の母国語は、「帰国子女」という言葉の定義上、絶対に「日本語」である。
つまり、帰国子女が今の日本で使われている「ネイティブ」の定義において、「英語のネイティブ」になることは、絶対に不可能なのである。
というより、日本国籍を持っている時点で誰も「ネイティブ」になんてなれやしない。
日本語の「ネイティブ」なら話は別だけどね。
改めて言われなくても、ということだろうけどもハッキリさせる必要がある。
僕らは日本に生まれた時点で「ネイティブ」 には絶対になれない。
では、英語が「ネイティブ」と全くの同レベルで扱える人はどうだろうか?
国籍こそ日本であれ、人生の大半を海外で過ごした帰国子女だってたくさんいる。
英語を第一言語とする帰国子女も「ネイティブ」になれないのだろうか?
「ネイティブ」は見た目が10割
学校の「ネイティブ」の先生。
英会話の「ネイティブ」の講師。
それらに大事なのは見た目である。
鼻が高いイケメンが良い。
ブロンドの美女が良い。
そんな単純な話ではな・・・
いや、そんな単純な話なのかもしれない。
考えてみてほしい。
仮に、
英語を第一言語、つまりは母語とする帰国子女「A子ちゃん」が居たとしよう。
A子は世間一般で言う「強い訛り」もない。
声だけ聞けば日本人とは思えないほど、自然で、流暢な英語を話せる。
彼女の英語は「ネイティブ」そのものだ。
A子は英会話学校のネイティブ講師募集にアルバイトとして応募することにした。
さて、A子は「ネイティブ」講師として採用されるだろうか?
答えはNOである。
なぜダメなのか、答えは簡単。
「ネイティブに見えないから」
その一点のみだ。
生徒さんは「ネイティブ」な講師に教わりたい。
そこには言語のレベル、教授法への理解、説明の上手さ、などはあまり関係ない。
何より大事なのが「説得力」と「実感」だ。
ネイティブに教わっている!
そこから来る安心感を生徒は求めているのではないだろうか?
幾ら英語が母語でも、アジア圏出身の人はネイティブ講師にはなれない。
アメリカで生まれたとしても、アジア系の見た目であれば、説得力を持たないためにネイティブ講師扱いにはなりづらいだろう。
「ネイティブ」とは、
世間が「外国人」と見た目で判断できる人。
これに他ならない。
これが現実ではないだろうか。
決して良い現実ではない。
あまりに視野の狭い見方だ。
でも、英語教育がビジネス化している以上、顧客である人々のニーズを無視することはできない。
英会話講師を採用する教室側も、それを重々理解している。
A子ちゃんがネイティブとして採用されないのは「英語力」の問題じゃない。
「英語ができる人」のイメージに合わないからだ。
僕は英語教員を目指し、大学・大学院と勉強を必死にしている。
しかし、僕は一生「ネイティブ」にはなれない。
僕個人の「英語力」うんぬんは関係ない。
おそらく日本の学校に採用されたら、日本人講師として扱われるだろう。
コミュニケーションを重視する授業、例えばディスカッション、ディベート、プレゼンテーションを扱うものは、基本的にネイティブ講師の仕事。
僕に与えられる仕事は、文法教授やリーディング、シャドーイングなどになるだろう。
適材適所、なのかもしれない。
でも、僕の「適所」を見た目と人種で判断されたくはない。
最後に、コレを見てどうか考えてほしい・・・
最後に、少し見てほしいものがある。
これを見てどのように受け止めるか、それは「あなた」次第。
https://eigox.jp/info_tutor-types/
※
特定の英会話教室を非難したいのではなく、あくまでも一例として。
探せば似たような学校ばかりだ。
どうだろうか?
英語はフィリピンの公用語だ。
フィリピン人であるという点で、その教師の価値、英語の良し悪しが決まっている。
見た目や出身地に応じて講師の価値が変わる。
発音や訛りに応じて英語の価値が変わる。
これが日本における英語教育の現状。
英語の良し悪しはいったい誰が決めるのさ?
価値がないと判断された訛りの英語は、もはや学ぶ必要すらないのか?
自分が今から入ろうとしている業界が、このような現状にあること。
僕はそれが悔しくて仕方がない。
この気持ちを分かってくれる人が他に一人でも居てくれたら、僕は救われるだろう。
結論!僕らは「ネイティブ」になれないし、ならなくていい
ここまで話しておいてなんだけど、
「ネイティブ」になる必要なんか、一切ない。
「ネイティブ」に対する盲信を捨て、表面的なモノマネじゃなく自分の英語に誇りを持つ。
そこがようやくスタート地点。
「ネイティブ」の英語が正解ってわけじゃない
英語母語話者と勘違いされる、そのような目標に意味はあるのだろうか。
英語に、言語に、近道なんてない。
楽な道を探す時間を努力する時間にする者は、着実に前進できる。
僕ら帰国子女だって一生「ネイティブ」にはなれない。
「日本人」として認めてもらうこともできず、「外国人」になることもできない。
僕らは狭間に生きる、そんな存在なのかもしれない。
でも、僕はそんな狭間が大好き。
いいじゃんか、どっちつかずの存在で。
狭間に生きるもの同士、支え合って生きていこうよ。
持ってないものにこだわる人生より、自分がすでに持っているもの、その大切さとすばらしさに気付き、胸を張って生きられる人生。
僕はそっちを歩みたいな。
君も一緒にどーだい?
では、僕から以上っ!!
Thumbnail photo credit: いらすとや